夏の夜のレイトショーが似合う映画といえば、フィルム・ノワールやアメリカン・ニューシネマの特集などが思いつきますが、個人的にはミュージカル映画につきます。それは単に私が高校生や大学生の頃、夏になるとたいていどこかの映画館で、「踊る大紐育」「雨に唄えば」「パリの恋人」「イースター・パレード」といった、いわゆるスタンダードな名作映画が上映されていたから。もちろん毎週、映画館に通って制覇する、なんてことはしなかったけれど、何か映画を観ようと思って、思いつく映画がないとそういう特集を観てました。ついでに映画館に行く途中でサントラを買っておいて、家に帰ってから聴いたりしてね。あるいは中学生の頃、夏休みにデートで「フットルース」や「フラッシュ・ダンス」を観に行っちゃったりした恥ずかしい思い出があるからか。
ミュージカル映画がすごく好きというわけではないけれど、あの脳天気な、幸せな感じがとても好き。ネガティブに言うと嫌いじゃない。だいたいダンスという普段、絶対にしないような体の動きをしながら演技するなんて、たとえ登場人物が悲しいときでさえ、どこかおかしな感じがするのは当たり前のこと。その現実感のない演出が、ミュージカルの良さでもあるし退屈な部分でもあります。でも、街並みの色をすべて原色に塗り替えてしまった「ロシュフォールの恋人たち」とか、ジーン・ケリーのダンスに強引にアニメーションを合成した「錨を上げて」を例に挙げるまでもなく、そしてストーリーや古いプリントのテクニカラー、セットを含めて、現実感のなさというのはミュージカル映画を“いいと思うか”、“嫌と思うか”のポイントだと思います。
今年の夏、もしどこかの映画館でミュージカル映画が上映されているようなことがあったら、久しぶりに観に行ってみようか。