直訳すると「過去の未来像」ってことになるのでしょうか。20世紀のデザイン、音楽、映画、科学、建築、肉体・・・・というあらゆる造形を絡ませながら、そのスタイルがどこから来ているのか、何を示していたのか、を論じていきます。
といっても作者の経験や趣味や考えが強く反映されていて、「これがすべて」という感じでないところがいい。ガーターベルトについてのコーナーが大きくとられていたり(「ガーターベルトをした女性としか恋愛をしたことがない」!)、オールド・コンピューターについての言及があったり、しかもそれをSFや映画、はたまたアシッド・ハウス、「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」に結びつけていたり・・・・。
高さへの欲求が未来的であった20年代、保守的ではあるけれど、進歩し続けることに意義があった50年代、そういった「約束された未来」を集大成する意味での万博の役割(とその崩壊)・・・・をとおして「輝かしい未来」「豊かな未来」を信じて発展してきた20世紀のスタイルへの言及していきます。そしてそれが60年代というユースカルチャーを経た73年前後を契機に、ノスタルジックという過去の生産、はては「過去のことを振り返りもしなかった60年代モダニズムそのものに『郷愁』を感じるというパラドキシカルな状況」に至るまでの記述が、個人的に気がついたときには、ノスタルジーの繰り返しの中に生きている世代である私には非常に興味深かったです。
そして私は、過去再生産が加速した90年代を振り返り、映画や音楽、ファッションにおいて、すでに「振り返る過去のスタイル」さえもなくなってしまったことに気づくのです(90年や95年を象徴するようなスタイルがどんなものだったのか!)。90年代を振り返ってその変遷に驚くのはPCの世界と女子高生のファッションだけかもしれません。