007シリーズの第一作目「Dr.NO」のサントラを聴いていると、カリプソ風やジャマイカ風の曲など、どの曲もカリブ海の雰囲気を持っていることに気がつきます。あの有名な「007のテーマ」が1曲目に収録されてなくて、何も知らずに音だけ聞かされたら007のサントラとは気がつかないくらいです。
80年代の終わりから90年代の初めに、エル・レーベルなどマイク・オールウェイのレーベルから出されていたフットボール応援歌のアルバムを聴いたことがある方は、その中にカリプソ風の曲が多数収録されていたことを覚えているでしょうか。
50年代、イギリスに西インド諸島からの移民が多く流れ込んだせいで、イギリスではスカのブームが起きた、という話をよく聞きますが、それと同じように50年代、カリプソはイギリスで花開くことになります。先ほどの「Dr.NO」のサントラもその曲のほとんどはジャマイカなどの西インド諸島からの来たミュージシャン達によって作曲され、演奏されています。実際、ロード・キチナー、ロード・メロディといったカリプソの重要人物をはじめ、タイニー・テラー、スモール・アイランド・プライド、プリテンダーといったカリプソニアン達が、イギリスのパーロフォンやメロディスクといったレーベルで録音を行いました。50年代のカリプソニアン達は、カリプソ特有の批評性を持ちながら、アメリカのエンターテインメント性を持ち合わせ、またサウンド的にもホーンセクションが主体となり厚みのあるものとなっていきます。またそのリズムからは60〜70年代のジャンプ・アップ・スタイル、あるいはソカの原型ともいえるビートを感じることができます。イギリスという国で西インド諸島の様々な国からの移民達との交流の中から、カリプソは新しいスタイルを持つ音楽と変化します。