「2000年、冬の電車の中」

2000年、冬の電車の中。池波正太郎「男の作法」、W.サローヤン「笑うサム、心、高原にある者」、W.スタイロン「タイドウォーターの朝」、R.ブローディガン「ビッグ・サーの南軍将軍」、S.ミルハウザー「バーナム博物館」、B.ハインズ「ケス」、P.ロス「われらのギャング」、B.シャコーチス「おれは彼女の心臓を食べた。」、E.M.フォースター「果てしなき旅」、和田誠「銀座界隈ドキドキの日々」・・・・、その他何冊かの雑誌、何冊かの漫画や写真集、そしてどこかで見つけたフリーペーパーをいくつか。
今年の冬の収穫は「ビッグ・サーの南軍将軍」と「果てしなき旅」。ブローディガンはそれほど読んではいないけれど大好きな作家。久しぶりに読んでまたうれしくなってしまった。E.M.フォースターの「果てしなき旅」は岩波文庫で出ていたのがいつの間にか絶版になってしまっていて、悔しい思いをしていた本。日比谷のオフィス街にある本屋で発見。たまには早めに打ち合わせに行ってみるもんだ。「インドへの道」「モーリス」などの映画の原作ということで、古き良き英国の上流社会といったイメージが強いフォースターだけど、実際に本を読むとそれだけではなくて上流階級と労働者階級、白人と黒人、ノーマルな人を同性愛者、といった相対する立場の人々の葛藤を上品に描いている。この本では上流家庭で育ち、高い教育を受け、倫理に基づいて高い志を心にえがいている主人公と、すぐに酒におぼれ、暴力に走る羊飼いが、実は兄弟だったということから、主人公の精神が崩壊していく様子を描いている。もちろんフォースターはそういった葛藤を上流社会の目で見ており、ディケンズのような労働者階級の視点やオーウェルのような階級社会への辛辣さはない。でも作家のあり方が知識階級というある種の上流社会ではなくなった現代ではフォースターの視点は新鮮に映るような気がする。(2000.4.3)
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