何年か前に香港EMIから、上海百代の音源が“百代中国時代曲名典”としてCD化されたことがありました(アビーロードスタジオでリマスター)。私自身、古い日本の歌謡曲を聴くようになって、その流れで李香蘭や、服部良一が戦時中に中国を意識して作った「蘇州夜曲」や「広東ブルース」「アデュー上海」といった曲を聴き、それがきっかけとなってこの頃の中国歌謡(“時代曲”と呼ばれています)に興味を持っていた頃だったので、当時かなりはまった記憶があります。といってもそれほどCDは買えませんでしたが・・・・。上海百代は、1914年にフランスのパテレコードが、フランス租界に東方百代公司という会社を設立したのが始まりで、1930年にイギリスのEMIに吸収され上海百代公司と称されようになり、1970年代まで上海や香港の歌手のレコードを発売していました。1930年代の上海は、200万枚のレコード(SP盤)が生産され、49ものラジオ局が開局し、1000本近い映画が作られるなど、さまざまな媒体からさまざまな音楽が鳴り響いていたのです。
そしてこれらの中国語大衆歌謡の魅力は、中国本来の音楽をベースにして、欧米のポップスやジャズ、ラテン、タンゴなど世界中のあらゆるジャンルの音楽をチャンポンにしたその混ざり具合です。うまくは言えないけれど、例えば、赤と青と黄という色があって、それがきれいに並んで描かれていて、近くで見ると3色に分かれているけれど、遠くから見るとそれぞれの色が混ざったように見える、というのがこの頃の歌謡曲としたら、今、香港で流行っている曲というのは(日本の今の歌謡曲もそうですが)赤と青と黄という色の絵の具をパレットの上で全部混ぜた後に、その濃い(悪意を持って言えば)汚れたような絵の具を画用紙に塗っている感じだと思うのです。ちょっと大げさかもしれませんが、私にとってはそんな感じなのです。