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Nothing but a Dreamer 大好きな植草甚一さんの話をしよう
(「ESQUIRE」:1989年SEPTEMBER)

「エスクァイア」は、日本版が創刊された時から1992年くらいまで、毎号買い続けていました。初めのほうは季刊だったせいもあって、かなり厚い本だったのですが、そのうち月刊になって、そして気がつくと価格も安くなって、内容も日本オリジナルのものが多くなって、現在は「エスクァイア」の日本版という感じではなくなってしまったような気がします。
この特集号が出たのは、私がちょうど植草甚一に興味を持ちはじめて、古本屋で「ワンダーランド」やスクラップ・シリーズなどを買いはじめたばかりだったので、とても嬉しかったのを覚えています。実際のところどうだったのか分かりませんが、当時は今とくらべると植草甚一の人気は高くなかったのではないでしょうか。そもそも私は30册以上あるスクラップ・シリーズのそのほとんどを、町田や横浜、調布の古本屋でかったのですが、たいてい300〜500円くらいで手に入ったし、神保町でも1000円しなかったと思います。

表紙
さて、植草甚一を特集した雑誌といえば、この「エスクァイア」のほかに、1995年に出た「太陽」が思い浮かびますね。もちろん私はこちらも持っています。どちらかといえば、植草甚一がよく歩いた神保町や新宿の街や喫茶店などが紹介してあったり、コラージュの写真が掲載されている「太陽」のほうが特集としては面白いし、ときどき読み直したりもしています。でもそれは、発行された年のせいも大きいと思うし、「太陽」と日本版というある意味束縛のあった頃の「エスクァイア」との雑誌の性格の差なのでは。まぁ上で書いたように、知りはじめたばかりに読んだ本の方が思い入れが大きいということで、こっちを選んでみました。

この特集では、タイトルと下の目次を見れば分かるように、植草甚一が亡くなって10年たっだから、生前親しくしていた人が集まって、彼の思いで話でもしようじゃないか、といった感じになっています。だから「片岡義男が植草家を訪ねたときの話」とか「淀川長治と植草甚一の出会い」、「渡辺貞夫のコンサートに植草甚一が来たときのこと」「所有していた4000枚のレコードをタモリが引き取った」などエピソードとしてはおもしろいのだけれど、やはりどこか身内の集まり、というか、「で、植草甚一はどんなことをしたの?」なんて言いたくなっちゃう。本人のことがちょっとないがしろにされてしまっているような気がしますね。中にはこれって単に「私は植草さんと親しかったんだよ」という自慢話みたいな感じになってしまっているものあるような・・・・。
その中で、小さいけれど、「植草氏が選ぶ映画(ジャズレコード・・・・)セレクション」があったり、「全著作リスト」なんていうのは、当時の私はかなり助かりましたね。今ではもう植草氏の本を集めようとは思わないけれどね。

多分、もう植草甚一というのは、結局今の(5年くらい前の)小西康陽なんだなぁ。で、そもそも何が新しくて、何が古いなんて問題ではなくなってしまったし、さらにアメリカで流行っているものがおもしろいということもなくて、実は東京で起きていることが一番おもしろいこともあったりして、今は、アメリカのの雑誌を読みまくって、「今、これがいいんだ」とか「今、これが一番新しい」なんてことを紹介する意味がなくなってしまったと思う。それで英語が分からなくても同じようなことができるから、小西のクローンみたいな人が溢れてしまったような気がします。

もしかしたら若いときはそういう人が、いい意味でも悪い意味でも必要なのかもしれないけれど、私はもういいやっって感じですね。
結局、自分が本当に気に入っているものを選び、自分が気に入ったスタイルで、自分が気に入っていることを、楽しみながらやっていくのが一番なんじゃないかと、歳をとったせいもあって、最近強く実感しています。それを人に主張したり、奨めたりするのではなくて、自分の楽しみとしてね。

目次より(抜粋)

常に紳士な精神的富豪の甚ちゃんと、日本で一番仲がよかったのは僕だっただろうな。 −淀川長治−
植草さんの知的好奇心がわかってくるのです。 −片岡義男−
映画・酒・ニューヨーク・ジャズ −野口久光−
植草甚一は江戸学の完成者だった。 −平岡正明−
坂をおりてきた植草・アドルフ・マンジュウ。 −田中小実昌−
小箱の中の切り抜きが、どんなコラージュになるんだろう。 −加藤芳一−
J・Jおじさんのニューヨークを散歩しよう。
甚ちゃんジロさんのよもやま話。N.Y.アルゴンキンホテルにて −久保田二郎−
知り合ったときから子供ほどの常識もありませんでした。 −植草梅子−
【コラム】
ミステリーで始まった  −双葉十三郎−
心底ジャズを愛しておられた音楽ファンだった。 −渡辺貞夫−
カリスマ的存在の植草さんのレコードを4000枚も引き取った。 −タモリ−
観察力の鋭さに驚くことがあった。 −浅井慎平−
年をとっていくごとにドンドン若返っていった。 −内藤忠行−
植草さんの写真から、散歩の論理がよみとれる。 −高梨豊−


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