100 Fashion Photo −100人の写真家による100枚のファッション写真− (「太陽」:1992年7月号、平凡社)

10代の頃は、写真にも興味なかったし(知っている写真家と言えば、ロバート・キャパ、沢田教一、アラーキーぐらいでした)、ファッションにも興味がありませんでした(今でもないけど)。「太陽」のこの号が出たときは、ちょうど写真に興味を持ち始めた頃だったので、「こんな写真を撮ってる人がいるのか」と実は思ったものです。同時期にBunkamuraでファッション写真の大きな展覧会もあったような気がします。
さて、「100人の写真家による100枚のファッション写真」と題されたこの特集ですが、その名のとおり1910年代から現在までを代表するファッション写真家100人の代表的な写真を一枚載せ、ディケイドごとの動向などをまとめたものです。基本的に一枚の写真をそれぞれの写真家ついての2,3行のコメントがあるだけなので、ファッション写真についてよく分かるといったものではないけれど、これが出た当時、私はほとんどファッション写真家を知らなかったし、その後も、はっきりとは名前を覚えていないけれど、何処かでその写真を見て良かったと思った写真家などを確認するのに役立ってます。
特集としてはまぁ安易な感じもするけれど、これだけ有名な写真を雑誌に掲載するというのは結構使用料とかかかるものなのだろうか?
掲載されている中から好きな写真家を中心にいくつかあげると、ジャン=ウジェーヌ=オーギュスト・アジェ、ジャック=アンリ・ラルティーグ、セシル・ビートン、ジョージ・ホイニンゲン=ヒューン、マン・レイ、マーティン・ムンカッチ、ハーマン・ランショフ、フランク・ホーヴァット、ウィリアム・クライン、サラ・ムーン、植田正治 などになるかな。
1910年代から8枚、1920年代から7枚、1930年代から8枚、1940年代から9枚、1950年代から8枚、1960年代から14枚、1970年代から9枚、1990年代から21枚、現在から16枚、選ばれています。また現在に近づくほど枚数は多くなり、かつ日本人写真家の数が多くなっています。これは太陽賞など普段から日本の写真家を多く紹介している「太陽」という雑誌の性格でしょうか。
個人的にはやはり60年代以前の写真が好きですね。70年代以降は、インパクトは強いのですが、どうも写真の取り方や色、モデルの格好やポーズ、表情などに、どこかしら“きつい”感じがしてしまいます。30年代から60年代の写真の、モノクロであるが故に華やかな色彩を感じさせてくれるという部分がいいと思う。それ以前の写真だとまた技術的にな意味で違った感じになってしまうし・・・・。
1910年代
一九世紀には印刷技術の問題もあって、イラストや版画が中心だったファッション誌が、1910年代に入るといっせいに写真を中心としたものになります。その中心となったのが、それまで社交界向けのゴシップ雑誌であった「ヴォーグ」でした。特に1913年から「ヴォーグ」のファッション写真を担当したアドロフ・ド・メイヤーは、ただ写真を撮るだけでなく、自分でドレスを選び、時には衣装をデザインするなど、アート・ディレクター的な役割を行うようになります。
1920年代
伝統的なハイ・ソサエティの優雅な美意識に変わって、ジャズ・エイジにふさわしい都市の活気溢れるモダンな感性がこの時代のファッション写真を支配します。また複雑なライティング、凝った構図など擬古典的な雰囲気が協調されました。
またアメリカのみでなくイギリスやフランス、そのほかの国々で欲望と感性を結びつけ増幅させるといった感覚のファッション写真が撮られるようになります。
1930年代
ファッション写真がファッション写真として社会の中に確固たる地位を築いたのが30年代でした。「写真」自体が社会の中で一つのメディアとして確立し、また写真印刷技術の発達によってさまざまな実験が行われ、写真の近代化行われます。こうした中でフォトジャーナリズムが成立することによって、ファッション写真も「動き」と「現実」を取り込んだものになっていきます。
1940年代
第二次世界大戦で惨禍を受けなかったアメリカという新しい場所から、40年代のファッション写真は発信されていきます。ヨーロッパから亡命した写真家やアメリカ出身の写真家たちが作り出したファッション写真は、ヨーロッパの伝統を直接感じさせるものではなく、アメリカニズムというべきテイストをたたえています。30年代における近代写真の確立と50年代の展開の狭間とも言えますが。
1950年代
一流のモデルを使い、アートディレクターと写真家のコンビでイメージを膨らませ、エキセントリックな構想、抽象的、暗示的な表現で、ファッション写真を大きく展開させたのがこの時代です。また第二次世界大戦と戦後の混乱から立ち直った日本でも、デザイナーや服飾企業のカタログ的な要素が強いものではあったけれど、徐々にファッション写真が注目されるようになってきました。
1960年代
写真機材、印刷技術の向上から、実験的、前衛的な作風を含めたファッション・フォトの「華麗な展開」がなされ、そうした写真が次々と写真集や雑誌で紹介されました。日本でも1960年に創刊された「ハイ・ファッション」がパリ・モード志向の服飾雑誌として、本格的なファッション・フォトを掲載したり、吉田大朋が「エル」と専属契約したり、三宅一生やコシノ・ジュンコといったデザイナーが注目されるなど、大きな動きとなっていきます。
1970年代
時代を華やかに彩った60年代の熱病が過ぎ去った後の70年代は、不況と深刻化するヴェトナム戦争で幕を開けます。ファッションでは、幻想性や未来性といった要素に変わって、実用的でベーシックなものが求められます。ファッション・フォトでも過剰なまでのセックス感覚や暴力、悪趣味な挑発といった毒々しいものがクローズアップされる一方で、女性美を追究しつつナチュラルなものが見直され、それにともない女性写真家が多くみられるようになります。
1980年代
一瞬の感覚や偶然性を排除したコンセプチュアルな写真が注目を集めます。また「性意識」の変化により男性ヌードやナイーブで内向的な男が表現されるようなり、70年代までのマッチョな男性像が崩れていきます。こうした、ある意味でホモ・セクシャルを強く喚起する写真に対する反発も強いものでしたが、社会基盤を形成しつつあったゲイ・カルチャーに支持されることで大きな流れとなっていきます。
現在
80年代との連続性の上に始まった90年代では、80年代を経て多様化したファッション表現が、さらに拡大していきます。また東欧の変質、ECの統合などの要因によって、ファッション写真はヨーロッパで活性化します。東欧の写真家たちが西側に参入し始め、イギリスの「i-D」「フェイス」といった小雑誌にヨーロッパ全土から若い才能が集結し、混血のモデルが人気を集めるなど、ヨーロッパを中心としながらも国境を越え、軽快に移動していく写真家が多くなっていきます。
■■■目次より(抜粋)■■■
・
「フェイクの世界」に裂け目が生まれる時
・
100 Fashion Photo
・
1910's −“欲望を大衆化する装置”ファッション写真の誕生−
・
からだとこころを解放した服装の革命
・
1920's −感性の上でもテクニックの面でも最大の転機が訪れた−
・
憧れは「男の子のような」雰囲気
・
1930's −メディアの相互作用が「ファッション写真」の枠組みを確立した−
・
ヴォーグとバザー
・
1940's −第二次世界大戦の終結と新しい伝統の追求−
・
アクセレイ・ブロドヴィッチ
・
統制の時代を経てよみがえるファッション
・
1950's −ペンとアヴェドンの光は日本に届いたか−
・
パリのクチュリエの復権とジーンズの登場
・
1960's −高度成長が日本のファッション写真を育てた−
・
ヒッピー運動とミニの大流行
・
モデルとカメラマン
・
1970's −混沌の時代を挑発したニュートンと、女性写真家の台頭−
・
フェミニティとファッション写真
・
消費者が選ぶ、多様化、量産化の時代
・
1980's −ウェーバー、メッツナーが推進した「性意識」の改革−
・
ファッション・カメラマンの条件
・
ファッション・デザイナーと写真家[1]
・
モデル・エージェンシー
・
アンドロジナスからボディ・コンシャスへ
・
現在 −国をまたぎ、軽快に移動していく若手写真家たち−
・
ファッション・デザイナーと写真家[2]
・
時短・フェイク・中国
・
ファッション写真と身体
・
ファッションの年代史
・
ファッション写真の周辺
|