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■日々の雑記 −2004年−
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「湖沼学入門」−山口瞳−
東北に向かう電車の窓から一瞬見えた沼の風景にひかれて、あんなところでゆっくりと絵を描けたらいいな、と思ったことから実現した企画で、山口瞳とドスト氏こと関保寿が全国の沼、湖などを巡りつつ絵を描く様子を綴られていく。
といっても緑や水辺がきれいな場所でのんびりとカンバスに向かっている、なんて光景はまったくなく。目当ての場所は記憶と違ってコンクリートで固められていたり、前情報で得た風景とまったく違っていたり、雨が降り続いていたり、はたまたほかのメンバーも含め出発の何時間前まで飲み続けていて二日酔いのままだったり、38度の熱を出して朦朧としていたり、親友が亡くなったすぐ後だったり・・・・あげていくときりがないほどアクシデントに見舞われつつ、旅が過ぎてしまいます。それは同じような趣向の「迷惑旅行」や「酔いどれ紀行」などと同じですが・・・・
そして文中で何度も繰り返されるのは「どうしようもないこと」と「とりかえしのつかないこと」の2つ。自分ではこうしたいと思っているのに、人に気を遣うばかりに、そのときに状況に無理に応対してしまうために、結局、自分のことがめちゃくちゃになってしまう、そんな自分では「どうしようもないこと」に悩まされる様はこの本だけでなく、山口瞳の本全体をおおう灰色の雲のようでもあります。
そして、最後のほうでは、山口瞳は、同し年と分かった旅館のお内儀さんに酔っぱらいながらこう言います。「ねぇ、お内儀さん、こう思いませんか、私たちの齢になって何か失敗すると、それはもう取り返しのつかないことなんだって。それで、失敗は骨身にこたえるね」と。それを聞いたお内儀は「ほんとうに、そうです」と答えて、二人で笑って、その後泣くのです。

   重いね・・・・

30を過ぎた頃はこういう気持ちが分からなかった。でもだんだんと自分のまわりは「どうしようもないこと」ばかりになっていって、それを無理に何とかしようとすると「とりかえしのつかないこと」になってしまうのが実感として分かるような気がする。
もう失敗のやり直しもきかないし、すべてをなしにして新しく始めることなんてできない、と思う。誰も失敗を忘れてくれないし、新しいことは認めてくれない。けっして悲観しているわけではないけれど(してるのかな)、これからの人生そういうものに囲まれてどんどん自分の居場所が狭くなっていくのだろうな。なんてことを思いつつ通勤電車に揺られていたら駅に貼っている雑誌のポスターに「女は35から」と書かれてありました。そうなんですか?
2004.11.12

「五代の民」−里見ク−
里見クの随筆の言い放つような書き方が気に入っている。でも「極楽とんぼ」も「多情仏心」も「安城家の兄弟」も「善心悪心」も「今年竹」も「道元禅師の話」も読んでない私ですが・・・・。いったい私は里見クのなにを読んでるのやら。結局なにをやるにも寄り道・回り道ばかりで・・・・

キープレフトからファイヤーキングのマグカップが送られてきた。10月に渋谷のパルコがリニューアルしたときに、行っていた雑貨プレゼントに当選したのです。プレゼントキャンペーンに当選するなんてほんとひさしぶり。最初にパルコから当選のお知らせが来たのだけれど、実際に商品が来るまで、ファイヤーキングのどのマグカップが当たったのか分からなかったので、箱を開けるまでちょっとドキドキしてしまった。で、中に入っていたのは緑色のKimberly Mug。持ってない形だったのでうれしい。さっそくそのマグにコーヒーをいれて飲んでみました。気がつけば我が家にファイヤーキングのマグが増えてきましたね。
2004.11.10

「ジョン・クレアの詩集」−上林暁−
自分で言うのもなんだけれど、渋い本ばかり読んでるなぁ。というより執筆時の平均年齢が高すぎ!この本もあとがきで書かれているように上林暁の25冊目の本で60代後半、70歳目前の作品集です。いや単に若いときの本が見つからなかったり、見つかっても高かったりして手に入らないだけなんですけど。これらの本を読んでその作家の作風などが分かるかということについてはちょっと疑問。でもこの現役ではないリタイヤして肩の力が抜けた感じの文章が、今の私にとっては魅力的でもある。そういう意味では山口瞳は最後まで現役だったのですね。

今日は、初台のオペラシティで10月16日から行われているヴォルフガング・ティルマンス展に行って来ました。初日は本人によるトークショウが行われたこともあって、会場はかなり混み合っていたらしい。私の場合、この展覧会を知ったときには、すでに終わってました。残念、トークの内容(テキスト)は近日公開予定らしいので、ホームページを時々チェックするつもり。まぁテキスト読むんだったら雑誌のインタビュー読んでるのと変わらないわけだが・・・・。
額に入っているプリントももちろんあるし、プリントがそのままテープで貼られているものもあるし、プリンターでプリントアウトされたものあったり、壁の上の方に張られている写真があったりと、それぞれ一つ一つの写真をじっくりと見ていくというよりも会場全体で一つの雰囲気(というとちょっと安易な気もしますが・・・・)を作り出してる感じの展覧会だったので、今日も割と見に来ている人が多かったけれど、それほど気にならずにゆっくり見れました。
2004.11.6

「歳月−安藤鶴夫随筆集」−安藤鶴夫−
安藤鶴夫は、芸能記者として都新聞、東京新聞などに文楽、落語、演劇評を執筆しながら、贔屓にしていた芸人についての芸談物を発表した作家で、講談師、桃川燕雄を主人公にした「巷談本牧亭」は、第50回の直木賞を受賞しています。私は落語などの下町の芸能についてぜんぜん詳しくないのだけれど、下町を中心とした東京についてのエッセイなどもいくつか出しているとのことだったので、いつか読んでみようと思ってました。まぁ一冊目としてはこんな文庫がいいんじゃないか、と。

この本ではテーマを「I.東京っ子として」「II.芸の人たち」「III.人との出会い」と3つに分けて幅広く安藤鶴夫の文章にふれられるようになっています。芸人や役者などについてのエッセイも、その書かれている人自身がおもしろいということもあって、知らなくてもおもしろいし、これをきっかけに調べてみたり、できることならCDやテープもちょっと聞いてみたいと思う(図書館とかにありそう?)。
ただしいろいろなテーマの中にそれに関するものが入っているという構成のせいで、いきなり「寄席紳士録」なんて読んだらつらいかもしれないけど。
2004.11.5

「秋日和」−里見ク−
タイトルですぐに分かるように小津安二郎によって映画化された物語の原作。といっても、小津安二郎と里見クが一緒にストーリーを考えた後、それぞれで小説化、映画化を行ったという話をどこかで読んだことがあります。
「秋日和」のほかに死んでしまった昔の親友の隠し子と実の息子が恋に落ちるのを止めようとする映画監督を描いた「ひと昔」や「藝者にでる」などの作品が収録されているのですが、どれも人情話というかちょっとした小話みたいなストーリーにもかかわらず、バタバタした感じがあまりなく穏やかな雰囲気の作品ばかりで、文字通り秋の晴れた日に喫茶店の窓際の席に座ってページをめくるにのにぴったりの本かもしれません。

さて、昨日は久しぶりに気持ちのよいお休みの日で、でも特に何をする、どこに行くというわけでもなかったのですが、午前中から窓を開けて、掃除をしたり、布団を干したり、洗濯したり、レコード聴いたり、ソファーで寝ころんだり、本を読んだり・・・・そんなことでもなんだか心地いい気分。そして秋のこういう日には、なぜかPLECTRUMの「THE ADVENTURE OF PONY RIDER」を聴きたくなってしまう。
PLECTRUMは、私にとってストレートな青春ギターバンド。このアルバムが出たときには私はもう20代後半だったせいもあり、ある意味ちょっと振り返るという意味で、そして自分がこういう音楽をよく聴いていた頃にはなかったまっすぐさや素直さを、そのまま奏でているような感じに惹かれてるのかもしれません。多分、10代の終わりとか20代のはじめだったらいいとは思えなかったと思う。同じような意味でArchの「In The Crosstown」やGomes The Hitmanの「weekend」もときどき続けて聴きたくなります。
2004.11.3

「遥拝隊長・本日休診」−井伏鱒二−
初めての暗室作業。前に書いたように新しい写真を撮れなかったので、朝起きて古いモノクロ写真を探してみたのだが、ない。アルバムに入っているのはカラーばかり。結局10年近い前の写真を持っていく。
横浜の梅香亭や喫茶ブラジル、中華街の小さな店・・・・などが写っていて、梅香亭で食べたハヤシライスはおいしかったなとか、レジの前に座ってテレビを見ていたあのおばあさんはもう亡くなってるのかな、とかこの写真に写ってる幼稚園くらいの男の子も今では中学生か高校生くらいになっているのか・・・・なんて考えるとちょっと感慨深い。C35で撮ったらしく、ちゃんとピントが合ってないような気がするけれど、まぁよしとしよう。・・・・と軽い気持ちで写真美術館のアトリエへ行ったら、ほかの人は外国の写真とか飼っている猫の写真とかまさにお気に入りの写真を引き伸ばしたい!という感じでまいる。

まぁ引き延ばし自体は、2時間半という限られた時間ではあったけれど、楽しかった。モノクロだと色の濃さを変えることぐらいしかできませんが(ホントはもっといろいろできるのだろうけどね)、それでも上半分だけ明るめにして下半分暗めにしたりといろいろやってみることができました。今度はカラーで色合いとか微妙に変えてみたいですね。「フォトショップでやったらすぐじゃん」とも言えますけどね。
2004.11.1

「灰皿妙」−永井龍男−
今日から11月3日まで、神保町で「神田古本まつり」。今日なんていい天気だったし比較的暖かかったし、神保町を歩いたらいい気分だっただろうなぁ、なんて思う。でも会社休んでまで行くほどでもないわけで・・・・。去年は曇り空の中、夕方から行ったにもかかわらずかなりの人混みだったので、今日あたりは平日でも初日だし人でいっぱいなのだろうか。行くとしたら土曜か水曜しかないのだけれど行けるかどうかは不明。ヴォルフガング・ティルマンスの写真展にも行きたいと思ってるし、部屋のプチ模様替えもしなくちゃいけないし(冬支度ともいう)・・・・。
ついでに3日からですが、横浜でも古書まつりをやっているみたいですね。でもこちらは有隣堂の地下一階のみです。伊勢佐木町といえば、以前雨の中歩いたときに、かなり寂しい感じの通りになっていたのにはびっくりしました。まぁもともとオデオンビル(だっけ?)なんて廃墟みたいな階があったりしてたけど、歩いていて欲しい本は見つからないし、雨は強くなってくるし、でも歩き始めたら桜木町まで歩かなくちゃいけないし(関内から伊勢佐木町通りを歩いて黄金町の近くに出て、桜木町で東横線に乗って帰ってきた)、いやな気分になりながら歩いた記憶があります。

前は「とりあえず永井龍男の本を買っておいて、読む本がなくなったときにでも読むことにしよう」と思っていた永井龍男の本もある程度本棚に増えてきたせいで最近はなかなか読んでいない本を見つけられなくなってきたような気がする。
これは山口瞳の本についても同じことが言えるのだが、二人とも、手頃な値段で売られていて、割合簡単に見つけられて、しかも著作が多いという読む方としては(言い方は悪いけど)便利でお得な作家だったので、こういう状態になるとちょっと寂しい。この二人ならもう一回読み直してもいいかもね。
2004.10.29

「山の手の子町ッ子」−獅子文六−
今度の日曜日に写真美術館で行われるモノクロネガをご自分の手でプリントするというワークショップに参加するので、ひさしぶりにモノクロのフィルムなんて買ってきて張り切っていたのだけれど、OM1には入れたばかりのカラーフィルムが入っていたり、それさえも撮りきる機会もなく、バーベキューの時もなぜか火をつけたり焼いてばかりいたのでぜんぜん写真を撮れず・・・・。残された時間は会社の昼休みだけなのだが、河川敷でバーベキューをしたせいではないだろうが、何年かぶりに熱を出したりして、昼休みに歩き回る元気もなし。しょうがないので昔に撮ったフィルムを探して持っていくことにする。でも暗室の作業とかまったくしたことないのでかなり楽しみ。

さて、熱はすぐに下がったのだけど咳は止まらず。それほどひどくないので、喉が痛いなぁと思いながらたばこを吸ったりしている。これが続くとぜんそくになったりしそうなので気をつけなくては。今年は秋と言えるような時期があまりなくて、なかなか夏が終わらないな、と思っていたら続けて台風が来て、気がついたら寒くなっていた。こういうときが一番危ない。
まずくしゃみと止まらなくなって、そのうち咳き込むようになって、暖かい日の気持ちのまま、あまり布団を掛けずに寝たりすると、明け方の気温が一番下がった頃、咳で息ができなくなってしまうのだ。昔はひとり暮らしだったし、友達が「クレイジーキャッツの人って喘息で死んでるんだよ」なんて言ってたことが頭をよぎったりして、このまま死んじゃうじゃないかと思ったものです。ここ何年かは出ていないのでちょっと気を抜いていたけれど、しばらく気をつけて生活しなくては、と思う。
2004.10.27

「井伏鱒二文集2 旅の出会い」−井伏鱒二−
もう10月も終わりに近くなってきましたが、多摩川の河川敷でバーベキューをした。13名、前はみんな同じ会社に勤めていたので、日程などもすぐに決められたのだけれど、バラバラになってしまうとなかなか難しい。加えて千葉の稲毛海岸に住んでいる人から神奈川の辻堂に住んでいる人まで、住んでいる場所が離れていたりするので、結局新丸子の多摩川沿いということになってしまう。まぁそれはそれでいいんだけれど。次回は違うところがいいかな。
天気のほうもものすごく寒いというわけではなかったけれど、晴れそうで晴れない曇り空。つい火の近くに寄ってしまったり、3時くらいになると「もう撤収しますか」という雰囲気になってしまう。でも10月の週末の天気を考えるといいほうといえるのでは、なんて言い合ったりして。

「井伏鱒二文集」の2巻目は、旅での出来事を綴った文章を集めたもの。戦後間もない頃の話だったりすることもあるけれど、ものすごい山の奥地の小さな宿屋に飛び込みで泊まったり、歩いて山を越えるような旅があったりで、なんだかのんびりした感じがいい。書いていないだけかもしれないけれど、旅先で「作家の井伏鱒二さんですか」なんて言われて歓待を受けるなんてこともないしね。
解説に「僕が小学生のころには、『風呂に入ってくるぞ』と石けんとタオルを持って出掛け、一週間帰ってこなかったこともあった」という井伏鱒二の長男の言葉が引用されているのを読んで、檀一雄も「飯食ってくる」って大阪まで行ってそのまま何週間も帰ってこなかったりしたってどこかに書いてあったのを思い出したりした。同じ放浪癖でもぜんぜんタイプは違う感じだけれど、どちらにせよなんだかうらやましい。
2004.10.25

「行きつけの店」−山口瞳−
「行きつけの店」というタイトルではあるけれど、料理のことはあまり書いていない。お店の主人や一緒に行った人とのとのやりとりが多い。だから文字どおり行きつけのお店を紹介するのではなく「私はこうやってお店の主人とつきあい、そこから学んできた」ということを伝えていると思う。だからこの本を読んで掲載されているお店に行くのではなく、そういうお店を自分の活動範囲で自分の足でさがせよ、ってことか。
そもそも最後に書いてあるとおりここに載っているお店の主人や内儀たちはほとんどなくなっているそうだし、お店自体もなくなっていたり改装されて山口瞳が通っていた頃とは(ある意味)まったく違う店になっているわけで。
そういう風に考えると私にとっての行きつけの店ってないなぁ。行きつけの古本屋とかレコード屋はあるかもしれないけど・・・・。
2004.10.22

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